実写化プロジェクトにおいて、世界的なファンコミュニティが最も熱い視線を注いだのがキャスティングです。原作者クレシッダ・コーウェルの世界観、そしてアニメーション版で確立されたアイコニックなキャラクター造形を損なうことなく、生身の人間のリアリティを吹き込むため、制作陣は極めて緻密な選考を行いました。
主人公ヒック役を射止めたのは、映画『ブラック・フォン』で鬼気迫る演技を披露し、若手実力派として一躍脚光を浴びたメイソン・テムズです。ひ弱で不器用ながらも、鋭い知性と誰よりも深い共感力を持つバイキングの少年という難役を、繊細な視線の揺らぎと身体表現で見事に体現。海外メディアの特番インタビューにおいて、テムズは「アニメ版を何百回も見返し、ヒックが持つ独特の歩き方や自己防衛の皮肉の言い回しを骨の髄まで叩き込んだ」と語っており、その徹底した役作りがスクリーンから溢れ出ています。
ヒロインのアストリッド役には、実写版『ダンボ』やドラマ版『THE LAST OF US』で確固たる存在感を刻んだニコ・パーカーが抜擢されました。発表当初は一部のSNS上で外見的なアプローチをめぐる議論も散見されたものの、予告編や本編が公開されるや否や、誇り高く屈強なバイキング戦士としての鋭利な眼光、斧を振るうダイナミックなアクション、そしてヒックの前で見せる不意の柔らかい表情が高く評価され、批判的な下馬評を一掃しました。
そして映画界を最も驚喜させたのが、ヒックの厳格な父であり部族の長であるストイック役を、ジェラルド・バトラーがアニメ版の声優から実写キャストとしてそのまま続投した事実です。アニメ版でキャラクターモデルのベースにもなったバトラー本人が、巨大な毛皮の鎧を身にまとい、赤髭を蓄えて威風堂々と現場に君臨した姿は、まさにアニメから抜け出してきたかのような説得力をもたらしました。さらに、ストイックの盟友ゲップ役には英国屈指のコメディ俳優ニック・フロストが起用され、無骨なバイキング社会に絶妙なユーモアと温もりを添えています。
これらの個性あふれる布陣を束ねたのが、アニメ版3部作すべての脚本・監督を務めたディーン・デュボア監督本人です。ハリウッドにおいて「アニメーション映画の実写化を同一のオリジナル監督が単独で手掛ける」という事例は極めて異例であり、スタジオ側の都合による安易なトーン変更を防ぐ最大の防壁となりました。