ネット上には「これからは胃カメラも大腸カメラも不要になる」といった極端な言説が散見されますが、これは完全な誤解です。胃の粘膜表面にとどまる早期の胃がんや、大腸ポリープの段階で病変を拾い上げ、その場で切除して根治できるのは内視鏡検査だけです。血液検査にいくら数十万円を費やしても、内視鏡の代替にはなりません。
また、日本社会における「手軽に白黒つけたい」という受診者心理の背景には、多忙ゆえに検診にまとまった時間を割けない労働環境や、侵襲的で苦しい検査(胃カメラや下剤服用)を避けたいという防衛本能があります。しかし、血液検査は「白黒をつける道具」ではなく、「精密検査に進むべき優先順位をつけるための指標」に過ぎないというリテラシーが求められます。
【プロの結論】血液スクリーニングをおすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
がん早期発見リキッドバイオプシーや各種血液スクリーニングを検討するにあたり、編集部が医療関係者への取材をもとに策定した客観的判断基準を提示します。
▼ 血液スクリーニングの利用をおすすめできる人:
- 家族歴(血縁者に特定のがん罹患歴が複数ある)があり、体質的な高リスクを自覚している人
- すでに定期的な胃・大腸内視鏡検査や胸部CTを計画的に受診しており、その「補助的な上乗せ」としてリスクを点検したい人
- 「リスク高」や「判定C」という結果が出た場合でも取り乱さず、冷静に保険適用の画像診断や精密検査に進む時間的・経済的余裕がある人
- 男性50歳以上で、前立腺がんスクリーニングとしてPSA検査を単体で活用する人(PSAは腫瘍マーカーの中で例外的に有用性が確立されています)
▼ 受診を慎重に判断すべき人(おすすめできない人):
- 「血液検査さえ受ければ内視鏡やバリウム検査、マンモグラフィを省略できる」と思い込んでいる人
- すでに体重減少、長引く咳、血便、異常な倦怠感などの自覚症状がある人(スクリーニングではなく直ちに専門診療科を受診すべき)
- 検査結果のわずかな数値の揺らぎやグレー判定で強い不安症(サイバーコンドリア・健康不安症)に陥りやすい人
- 高リスク判定が出た際に、精密検査を受けるための費用や受診時間を確保できない人