洗濯機の蛇口といえば、新築時や賃貸物件の標準仕様として水しか出ない「単水栓」が備え付けられているケースが一般的でした。ところが、共働き世帯の増加に伴う家事効率化への要求や、衛生意識の高まりを背景に、洗濯機専用の混合水栓へとリフォームする動きが加速しています。
その背景にある最大の要因は、洗濯機でお湯を使うと汚れ落ちが劇的に跳ね上がる化学的な理由にあります。衣類の嫌な臭いや黄ばみの主因は、人体から分泌される皮脂(主にトリグリセリドやオレイン酸などの脂肪酸)です。これらは約37℃を下回ると固化して繊維の奥深くへ強固に固着し、水温が10℃〜15℃まで低下する冬場の冷水では洗剤の界面活性剤が十分に作用しません。水温を皮脂の融点を超える40℃〜45℃に設定するだけで、油分が液状化して繊維から容易に剥がれ落ち、洗剤中の酵素も最も活性化する環境が整います。
温水洗浄機能を備えた高級ドラム式洗濯機も広く普及していますが、洗濯機本体の内蔵ヒーターで冷水を温める場合、設定温度に達するまでに30分〜1時間以上の時間を要し、1回あたりの電気代も跳ね上がります。一方、壁面の混合水栓を通じて給湯器で作られたお湯をそのまま給水すれば、給水開始直後から適温で素早く洗い始められるため、洗濯時間を延ばすことなく高い洗浄効率を得られます。この圧倒的な「タイムパフォーマンス」と「コスト効率」が、合理的な家事を追求する生活者から強く支持されている要因です。