日本の水産業を取り巻く流通技術は目覚ましい進化を遂げてきた。船上での急速凍結技術やマイナス50度以下の超低温保管により、水揚げ直後の鮮度を封じ込める技術は世界屈指のレベルにある。水産庁が推進する水産物バリューチェーンの高度化によって、消費者の手元には極めて高品質な冷凍甲殻類が届くようになった。
しかし、大手水産企業のマルハニチロをはじめとする加工・流通のスペシャリストたちが口を揃えて指摘するのは、最終ランナーである家庭内調理での「過熱」と「急激な解凍」による品質劣化だ。急速冷凍によってガラス化された細胞は、乱暴に熱を加えられると氷結晶が膨張して細胞壁を破断させる。結果として、甲羅や脚の隙間から「ドリップ」と呼ばれる濃厚な旨味エキスが全て流出してしまう。高級品であればあるほど、調理前のわずかな配慮が生死を分ける。