なぜ引退力士たちは「小野川」の名跡を襲名するのでしょうか。その背景には、大相撲独特の年寄株(名跡)の保有・貸借ルールが存在します。
日本相撲協会に所属できる年寄の定員は105名と完全に固定されており、現役を退いて指導者として残るためには、空いている年寄株を取得するか、所有者から借り受ける(いわゆる借株)必要があります。小野川の名跡は、一門内での師弟関係や部屋の再編、さらには本名跡を取得するまでの過渡期における一時的な襲名先としても活用されてきました。
例えば、元幕内・北太樹は引退時に「小野川」を襲名して後進の指導にあたり、後に名門・山響部屋を継承して師匠(山響親方)となりました。このように、小野川という名跡は次代の相撲界を担う有望な指導者がステップアップするための極めて重要な足がかりとしても機能しているのです。