頬骨の真下を押したときに痛みが生じる場合、痛みの発生源は大きく分けて「筋肉・関節の障害」「空洞(副鼻腔)の炎症」「神経の興奮・圧迫」「歯根からの感染」という4系統に分類されます。顔の表面は薄い皮膚と脂肪に覆われていますが、その深部には人間の生命活動に直結する重要組織が高密度に密集しているためです。
まず筋肉性の要因として最も頻度が高いのが、咀嚼筋のひとつである「咬筋(こうきん)」の過度な緊張です。咬筋は頬骨弓から下顎骨へと伸びており、無意識の歯ぎしりや食いしばり、スマートフォンの長時間閲覧に伴ううつむき姿勢によって持続的な負荷がかかると、筋肉が過緊張を起こしてトリガーポイント(発痛点)を形成します。このコリを押圧した際、重だるい鈍痛が走ります。
しかし、押した際の痛みが「ズキズキと拍動する」「頭蓋骨の奥に響く」「ビリッと電気が走るように痛む」といった性質を帯びている場合、筋肉の疲労では説明がつきません。頬骨の奥には、頭蓋骨内の空洞である上顎洞(じょうがくどう)が存在します。ここに細菌や真菌が感染して膿がたまると、内圧の上昇によって骨壁が圧迫され、外から指で押した際に激しい圧痛を生じさせます。
さらに見逃せないのが、顔面の知覚を司る「三叉神経」の第2枝(上顎神経)のトラブルです。神経が血管による圧迫を受けたり、ウイルス感染によって炎症を起こしたりしていると、頬骨下部の神経出口(眼窩下孔周辺)を押した瞬間に、飛び上がるような痛みが誘発されます。単なる疲れと疾患を分ける最大の境界線は、「局所の安静や休息で痛みが軽減するか」「鼻症状や歯の違和感、しびれを伴っていないか」という点にあります。