ガラス越しに並べられた出来合いのケーキをトングで皿に盛る時代は終わった。現在、予約困難店のトレンドを牽引しているのは、シェフが客の目の前で最後の一押しを施すライブカウンター形式だ。例えば表参道にオープンした話題のサロンでは、オーダーを受けてからマイナス196度の液体窒素で凍らせた果汁のソルベや、賞味期限わずか3分と謳われる出来立ての温かいスフレが一つずつ提供される。
温度変化によって刻一刻と表情を変える香りや、口の中で儚く解ける繊細な食感は、従来の作り置きブッフェでは絶対に再現できなかった領域だ。「食べる直前の空気感も含めて一皿の作品」と語るグランパティシエの言葉通り、ゲストは単なる消費者から、完璧な瞬間を目撃するプレミアイベントの参加者へと立ち位置を変えている。