かつて地域住民の憩いの場であった新宿大久保公園は、今や物理的・空間的な防犯対策の実験場と化している。新宿区役所は公園周囲のフェンス改修、見通しを確保するための植栽剪定、さらには夜間の照明増強など、環境犯罪学に基づいたアプローチを矢継ぎ早に打ち出してきた。
新宿区長の吉住健一は、地域の治安維持と青少年の健全育成を掲げ、警察と連携したハード・ソフト両面からの対策を強力に推進してきた。だが、ベンチの撤去や空間の閉鎖といった排除型の対策に対しては、地域コミュニティや支援団体からも複雑な声が上がる。「場所を塞いでも、人が生きるための理由や困窮の根源が消えるわけではない」。区の担当者が漏らす苦渋の表情には、行政施策の限界とジレンマが滲み出ている。