自衛隊内のハラスメント問題が国民的な関心事へと押し上げられた背景には、元陸上自衛官の五ノ井里奈氏による実名告発があった。彼女が命がけで暴いた性暴力と隠蔽体質は、自衛隊という巨大組織が被害者の尊厳をいかに軽視し、自浄作用を働かせずに握りつぶしてきたかを白日の下に晒した。
この告発は氷山の一角にすぎない。防衛・公務産業に属する職場環境は、民間企業のような外部監査が入りにくく、閉鎖的な論理が優先されやすい特異性を持つ。上官の不当な命令や人格否定に異を唱えれば「反抗的」とレッテルを貼られ、組織内で生きていく道を絶たれる。こうした報復への恐怖が、自死を選ばざるを得ない心理的監禁状態を生み出している。