かつて公益財団法人日本スケート連盟の看板として、また国際オリンピック委員会(IOC)が主催するオリンピック冬季競技大会で2連覇を達成した伝説として、彼は常に組織の期待を一身に背負ってきた。しかし現在、スポーツジャーナリズムが論じるべき対象は、メダルの色ではなく「彼が切り拓いた新たな身体表現の可能性」へとシフトしている。
競技というルールブックから解き放たれた今、彼のスケーティングはフィギュアスケートという枠組みすら拡張しつつある。技術的な完璧さと演劇的な叙情性の融合。採点競技のスコアでは測りきれなかった陰影が、プロとしての舞台で濃密に花開いている。競技団体が築いてきた歴史の頂点に立ち、そこから自力で飛び立った鳥のように、彼は独自の生態系を創り上げた。