ファッションブランドの鞄が数年で買い替えられるサイクルのなか、なぜ一澤信三郎帆布のトートバッグやリュックは何十年にもわたって使い続けられるのか。その理由は、徹底的な現場主義と素材選びにあります。
使われている帆布は、滋賀県高島市などの国内産地で特注織成された天然の綿・麻です。糸の撚り方から織りの密度まで職人の指定通りに作られており、撥水加工を施しながらも布本来の通気性と風合いを損ないません。さらに、縫製には強靭な太番手の糸を用い、負荷のかかる持ち手や底角には自社特注の刻印入り銅製リベット(鋲)が手作業で打ち込まれています。
愛用者のコミュニティやレビューで際立つのは、購入直後の「硬さ」が数年かけて自分だけの「柔らかさ」へと変わっていく経年変化(エイジング)への賛辞です。
「使い始めは自立するほどゴワゴワしていたトートバッグが、5年経つと身体の脇にぴったり寄り添うように馴染んできた。色褪せもみすぼらしさではなく、まるでヴィンテージジーンズのような深い味わいになる」(40代・大学教員)
「20代の頃に京都本店で買ったデイパック型のリュック。通勤で雨の日も酷使したが、破れる気配が一切ない。一度ファスナーが傷んだ際も工房で見事に修理してもらい、娘の通学鞄として引き継いだ」(50代・会社員)
一方で、近年の軽量ナイロンバッグやハイテク素材に慣れ親しんだユーザーからは、「バッグ単体でそこそこの重量がある」「雨に濡れたまま放置すると色移りのリスクがある」といった率直な指摘も見られます。実用道具としての重厚感を味と捉えられるかどうかが、満足度の大きな分水嶺となっています。