猫の耳には左右それぞれ32個の筋肉が存在し、独立して180度動かすことが可能です。人間には聞き取れない高周波(最大約65,000Hz)まで捉える優れた聴覚器官を、状況に応じて自在に変化させています。では、なぜ水平方向に耳を伏せる形状をとるのでしょうか。
行動生態学において、猫のイカ耳の理由は大きく4つのカテゴリーに分類されます。
第一に「防御と威嚇」です。野生下での喧嘩や捕食者との対峙において、耳は薄く傷つきやすい急所となります。耳を平らに倒すことで、相手の爪や牙による損傷を防ぐプロテクターの役割を果たしているのです。
第二に「索敵・集音」の機能です。前方を凝視しながら後方や頭上で物音がした際、視界を外さずに背後の音を聞いている状態になると、耳だけが後ろ向きに伏せられてイカ耳の形状になります。
第三に「強い集中」です。おもちゃを狙って飛びかかる直前や、窓の外の鳥を観察しているとき、余計な風切り音や雑音を遮断し、獲物の微小な動きに感覚を研ぎ澄ますために耳を後方に絞り込みます。
第四に「リラックスと脱力」です。信頼する飼い主に頭や顎下を撫でられ、気持ちよさのあまり顔全体の筋肉が緩むことで、自然と耳が倒れる現象が確認されています。このように、猫のイカ耳の気持ちや心理は一様ではなく、文脈に応じた解読が求められます。