オアシスのリードボーカルといえば、唯一無二の声量と不敵なアティテュードを誇るリアム・ギャラガーです。しかし、バンドの代表曲であり最大のアンセムの一つである本作では、兄であるノエル・ギャラガーがメインボーカルを担当しています。この役割分担が決定した経緯には、兄弟間のスリリングな駆け引きが存在しました。
アルバム『モーニング・グローリー』のレコーディング直前、ノエルはリアムに対して二者択一の明確な選択権を提示しました。
「俺には『ワンダーウォール(Wonderwall)』と『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』という傑作が2曲ある。お前がどちらか1曲を歌え。歌わなかったほうは俺が自分で歌う」
リアムは迷った末に「ワンダーウォール」を選びました。その結果、ノエルが「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」のリードボーカルを執ることとなったのです。当時のリアムは、自分が歌わない楽曲が存在することに苛立ちを見せる場面もありましたが、ノエルの持つ哀愁を帯びたメロディアスな歌声は、この楽曲が内包する内省的で普遍的なメッセージと完璧な調和を生み出しました。
1995年にリリースされたセカンドアルバム『(What's the Story) Morning Glory?』は、全世界で2200万枚以上のセールスを記録。ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』やクイーンの作品群と並び、イギリス音楽史上最も売れたアルバムの上位に君臨し続けています。