しかし、神童と呼ばれた少年にも避けられない通過儀礼が訪れる。声変わりだ。
10代半ばを迎え、あのトレードマークだったクリスタルボイスは徐々に低く太い響きへと変化していった。多くの少年歌手が直面するこの残酷な転換期に、ミゲルもまた深い葛藤を抱えたという。これまでの代名詞だった高音が出ない。世間が求める「ミゲルくん」のイメージと、刻一刻と変化する自身の身体とのギャップ。彼は一時的に日本のメディア露出を控え、母国ポルトガルで学業に専念しながら、基礎から発声を見つめ直す地道なトレーニングへと舵を切った。華やかなスポットライトの裏側で、少年は静かに、しかし着実に爪を研いでいた。