週末はおろか、平日ですら連日満室が続く状況はなぜ生まれたのか。その背景には、画一的な高級旅館やリゾートホテルとは一線を画す「日常の再発見」がある。
ここを訪れるゲストの多くが口を揃えるのは、時間の流れが劇的に変化する感覚だ。敷地内に足を踏み入れると、新潟産木材をふんだんに使用した木の香りが漂う。部屋の窓一面に広がるのは、手つかずの潟の風景。テレビの音を消し、鳥の声と風のそよぎに耳を澄ませるだけで、張り詰めていた神経が解きほぐされていく。
ある大手旅行会社の観光プランナーはこう分析する。「旅行者の価値観は、単なるラグジュアリーから、その土地特有の文化や自然への深い没入体験へとシフトしました。日本観光振興協会が提唱する地域滞在型観光の理想形が、まさにこの地に具現化されています」。観光庁が推進する高付加価値化の文脈においても、ローカルの原風景をそのまま体験価値に変えるこの宿のアプローチは、全国の宿泊モデルから注目を集めている。