カスカベ防衛隊のメンバーを見渡すと、しんのすけの母・みさえ、風間くんのママ、ネネちゃんのママ、マサオくんのママと、母親たちの個性豊かなキャラクター性が作品の重要な柱となっている。ところが、ボーちゃんの母親だけは徹底してその姿が隠され続けている。
アニメ史上で母親の存在が直接的に描写されたのは、後姿のシルエットや、雨の日に迎えに来た傘越しの手元など、極めて限定的なカットのみだ。母親が学者であるという説や、特殊機関の要人ではないかという奇抜な都市伝説まで生まれた。しかし作中の描写を丁寧に拾い上げると、ボーちゃん自身が「お母さんが作ってくれたお弁当」「お母さんと一緒に買い物に行った」とごく自然に語る場面が多々ある。家庭環境はきわめて温和で良好なのだ。あえて顔を描かないという演出上の選択が、彼の孤高のリアリティを際立たせている。