下関といえば、何と言ってもフグだ。現地では「福」に通じることから「フク」と呼ぶ。全国で水揚げされる高級天然トラフグや養殖フグの多くがこの下関に集積し、独自の競り方式「袋競り(ふくろせり)」によって取引されていく。競り人と買受人が布袋の中で互いの指を握り合い、提示価格を外部に漏らさずに瞬時に決める伝統の技は、まさに緊張感にあふれた職人たちの真剣勝負だ。
一般観光客も2階の回廊や見学通路からこの競りの様子を安全に観賞できる。まだ薄暗い早朝の市場内に響く足音と、競り落とされた魚が次々と運ばれていくスピード感。卸売市場としての本物の機能が生きているからこそ、ここで提供されるフグの刺身(ふくさし)やフグ汁の味には一切の妥協がない。職人たちの誇りと伝統が、ひとくちの美味しさにそのまま凝縮されているのだ。