海外企業との共同プロジェクトやグローバルなチーム運営を観察すると、日本人が「go for it」の受発信において特有のすれ違いを起こしている事例が散見されます。
最大の落とし穴は、「相手が明らかに精神的・肉体的に疲弊している状況で使ってしまうこと」です。例えば、連日の残業や激務で消耗し切っているプロジェクトメンバーに対し、日本語の「もう少し頑張って!」のニュアンスで「Go for it!」と声をかけてしまうケースです。
前述の通り、「go for it」はエネルギーを持って新しい対象へ突進するフレーズです。すでに限界を迎えている相手にこれを使うと、ネイティブの感覚では「もっと走れ」「倒れるまで突き進め」という過酷な突き放しに聞こえてしまいます。この場合は「Take it easy(無理しないで)」や「Don't push yourself too hard(根を詰めすぎないで)」を選択するのが対人心理学上の適切なアプローチです。
現場のヒアリング調査でも、外資系IT企業に勤務するバイリンガル社員から「同僚が疲れ果てている時に『Go for it』と励ましてしまい、怪訝な顔をされた経験がある」という証言が確認されています。言葉が持つベクトル(前進なのか、休息なのか)を見極める配慮が欠かせません。