監督の黒沢清と名優・役所広司のタッグは、常に日本映画史に消えない足跡を残してきた。サスペンスの傑作『CURE』から数十年、円熟味を増した二人が再び交差する舞台として選んだのが本作である。
黒沢監督が得意とする「日常に潜む静かな狂気」と、役所広司が体現する「圧倒的な人間味と悲哀」。この二つの才能が衝突することで生まれるシナジーは計り知れない。クランクイン直前のインタビューで関係者は、「役所氏はこの役作りのために数ヶ月に及ぶ特殊なアプローチを行っており、その立ち姿だけで寒気がするほどの凄みがある」と証言する。観客を画面の奥深くまで引きずり込むような圧倒的な美意識が、画面の隅々にまで張り巡らされている。