二人の関係性を決定づけた金字塔といえば、ウィリアム・シェイクスピア原作の舞台『ハムレット』である。タイトルロールという絶望的なまでの重責を担った小栗は、膨大なセリフ量と複雑な心理描写に苛まれた。「生きるべきか、死ぬべきか」。劇中の悲劇の王子と、蜷川の要求に応えようともがく小栗自身の姿が見事に重なり合った。
連日のハードな稽古により、声は嗄れ、心身ともに限界を超えていた。だが舞台の幕が上がると、そこにいたのは苦悩を力に変換した異彩を放つハムレットだった。客席を震わせる咆哮と繊細な苦悩。蜷川のスパルタ指導と小栗の執念が見事に結実したこの作品は、日本演劇史に深く刻まれる伝説の一幕となった。