鬼才として国際的な賛否を巻き起こし続けたキム・ギドクが製作・脚本を手掛けた本作は、企画当初から異例ずくめのプロジェクトだった。主人公の中国人青年チェンを演じた実力派俳優パク・ギウンは、全編ほぼ中国語のみのセリフという過酷なハードルに直面しながらも、極限状態に置かれた人間の渇望を鬼気迫る演技で体現した。
撮影現場はまさに密室劇の緊張感そのものだった。中国産ウナギの水銀汚染という実在の社会問題をモチーフに据えながら、制作陣が徹底したのは「安易な善悪の二元論に逃げない」という鉄則だ。韓国の入国管理局や食品検査場を舞台にした閉塞感漂うロケーションは、徹底した現場取材と当事者たちの証言をもとに構成されている。スタッフが明かしたところによれば、極小の予算とタイトな撮影スケジュールの中で、役者陣と撮影クルーは常に限界状態のテンションを保ちながらカメラを回し続けたという。