期限を過ぎた薬を飲む最大のリスクは、主成分の分解に伴う有害物質の生成と、期待される薬効の消失だ。熱や光に弱い化合物は、分解産物が胃腸粘膜を激しく刺激したり、肝臓や腎臓に想定外の代謝負荷をかけたりする。
中でも抗生物質の中途半端な服用や期限切れの利用は極めて深刻な問題を引き起こす。十分な血中濃度が得られないまま病原菌に中途半端な打撃を与えることで、薬剤耐性菌を生み出す土壌を自ら作ってしまうからだ。これは個人の健康問題にとどまらず、社会全体における感染症制御の脅威にも直結する。
病状に応じた適切な量を、正しい期間だけ使用する医薬品適正使用の原則を守らなければ、薬は容易に毒へと変貌する。