『火垂るの墓』の作者である野坂昭如(のさか・あきゆき)は、1930年(昭和5年)に神奈川県鎌倉市で生まれました。実父は土木技師で後に新潟県副知事を務めた野坂相如氏でしたが、生後まもなく母親が急逝したため、神戸の裕福な貿易商・張鍋(はりなべ)家に養子として引き取られることになります。
養父母の温かい愛情を受けて育った野坂少年でしたが、太平洋戦争末期の1945年6月5日、神戸大空襲によって平穏な生活は一瞬にして崩壊しました。養父を空襲で失い、自宅も全焼。重度の火傷を負った養母を疎開先の親戚に預けた後、当時14歳だった野坂は、同じく養子として張鍋家に引き取られていた1歳4カ月の義理の妹・恵子ちゃんを連れ、西宮や福井へと過酷な疎開生活を余儀なくされたのです。