SNSやグルメメディアでは「焼きたて=正義」という風潮が根強く存在しますが、製パンの専門的見地から見ると、これはすべてのパンに当てはまるわけではありません。ここに消費者が知っておくべき重大な盲点があります。
例えば、大型のライ麦パン(カンパーニュやフォルコンブロート)や、長時間熟成のバゲットなどのハード系パンは、「焼き上がり直後は味が未完成」です。窯出し直後のハードパン内部には大量の炭酸ガスと水分が充満しており、酸味や発酵臭が立ちすぎて風味が粗く感じられます。焼き上がってから半日〜1日ほど寝かせることで、水分が全体に均一に行き渡り、小麦本来のアミノ酸と熟成香が調和して真の旨味が現れます。
また、バターを大量に使用したクロワッサンやブリオッシュも、窯出し直後はバターが液体化しており、口当たりが油っぽく感じられることがあります。焼き上がりから約20〜30分経過し、生地温度が人肌程度に落ち着いて油脂が適度に固まったタイミングこそが、サクサクとした幾重もの層とバターの甘みを最も引き立てる絶頂期なのです。