逃走から数日後、追跡の手が伸びる大阪近郊を脱出した男は、巧妙なキャラクターへと変貌を遂げる。黒色のクロスバイクを調達し、野宿をしながら旅を続ける「旅人」の仮面を被ったのだ。香川県や愛媛県などの四国路を巡り、瀬戸内海の美しい島々を渡るルート上では、道の駅や野営地に集う本物のサイクリストたちと自然に合流していた。
各地で記念撮影に応じ、地元住民から差し入れを受け取るその姿には、凶悪犯としての警戒心や怯えは微塵も感じられなかったという。周囲の旅人に対して偽名を名乗り、自転車の故障を直すなど親切な振る舞いを見せていた。警察が駅や繁華街に捜査リソースを集中させていた間、彼は「オープンな旅のコミュニティ」という最も無防備な場所に完璧に隠れ潜んでいた。