キャスティングの現場で何が起きているのか。大手芸能事務所であるトライストーン・エンタテイメントをはじめとするプロダクションが送り出す実力派たちは、企画会議の初期段階から争奪戦が繰り広げられている。あるベテランプロデューサーは次のように証言する。「派手なタレント性よりも、シチュエーションを選ばずに作品世界へ溶け込める順応性が求められている。特に塩顔のトップ俳優は、監督の作家性を邪魔しない柔軟性を持っている」
日本映画の興行を牽引する東宝などの大手配給作品においても、その効果は実証済みだ。興行収入30億円を突破した大ヒット作『余命10年』で見せた坂口健太郎の抑制された涙は、多くの観客の共感を呼んだ。派手に泣き叫ぶのではなく、静かにこぼれ落ちる感情。この引き算の演技が、近年のメガヒット作における共通項となっている。