そもそも、なぜ従来のレシピではパン粉が多用されてきたのでしょうか。パン粉の最大の役割は、加熱時に肉から溶け出る脂や水分(肉汁)をスポンジのように吸い込み、肉ダネの内部に留めておく「保水材」の機能です。裏を返せば、パン粉なしハンバーグが固くなる理由は、つなぎがないことで加熱時に肉汁が外へ流出し、肉の繊維だけが強く収縮してパサついてしまう点にあります。
しかし、分子調理学や食肉加工の視点から見ると、肉汁を閉じ込める主役はパン粉だけではありません。ひき肉に適切な量の塩を加えてしっかりと練り込むと、筋肉中のアクチンとミオシンというタンパク質が結合して「アクトミオシン」という網目状のゲルを形成します。このゲルが水分と脂をガッチリと抱え込むため、ハンバーグ肉汁閉じ込める方法の基本は、最初の「塩練り」にあるのです。
ここに片栗粉のデンプン網やマヨネーズの乳化脂、あるいは豆腐の水分保持力を組み合わせることで、パン粉を加えなくても従来のレシピ以上に柔らかくジューシーな質感を生み出すことが可能になります。