現代の生命倫理学は、患者の自己決定権の尊重と、生命の不可侵性という二つの絶対的価値の激突の間で揺れ動いている。痛みに喘ぐ個人の主権を認めるべきだというリバタリアン的な視点と、いかなる理由があれ社会が命を選別・処分する仕組みを容認してはならないというコミュニタリアン的な視点は、容易には妥協点を見いだせない。
問われているのは、死に方を選ぶ自由の前に、苦痛なく生き抜くための選択肢が社会に十分に用意されているかという点だ。緩和ケアの高度化、難病患者や重度障害者への手厚い介護体制、そして孤独を防ぐコミュニティの再構築――これらが整わないまま安楽死の議論を進めることは、社会の脆弱性を死によって覆い隠すことに他ならない。命の幕引きをどう迎えるかという問いは、私たちがどのような社会を築きたいのかという、生そのものへの問いかけである。 (出典: 日本 安楽 死(Yahoo!ニュース))
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