過酷な運命は、逸見晴恵を休ませてはくれなかった。夫を見送った後、彼女自身もまた「胞巣状軟部肉腫」という稀少ガンに侵されていることが判明する。度重なる手術と再発。絶え間ない激痛と死への恐怖のなかで彼女が執筆した『ガン再発すれど…』には、前作を凌ぐ凄絶なリアリティが宿っていた。
「なぜ自分ばかりが」という怨嗟の言葉を吐き捨てるのではなく、病と共存しながら残された日々をいかに誇り高く生きるか。彼女は自らの身体を実験台のように観察し、病気の恐怖を言語化することで精神の主導権を握ろうとした。2010年、61歳でその生涯を閉じるまで、彼女が示した威厳に満ちた姿勢は、現代の緩和ケアや終末期医療の視点からも極めて先駆的なメッセージを投げかけ続けている。