モスクを語る上で外せないのが、息をのむような「イスラム建築」の美しさだ。東京・代々木上原に聳える「東京ジャーミイ」に一歩足を踏み入れれば、オスマン様式の優美なドームと、繊細なアラベスク(幾何学文様)が視界を埋め尽くす。
天井から差し込む柔らかな自然光とステンドグラスの煌めきは、偶像崇拝を排したイスラム芸術が到達した極致と言える。トルコから運ばれた大理石や熟練工の手によるカリグラフィー(アラビア文字の書道)は、見学者を陶酔させるに十分な力を持つ。
かつて哲学者・東洋思想家の「井筒俊彦」は、イスラーム神秘主義の深遠な言語空間と東洋の叡智との親和性を鋭く説いた。その思索を想起させる静寂の空間が、東京の真ん中に息づいていること自体が一つの驚きである。