かつて日本のポップミュージックは、テレビドラマのタイアップや大規模な宣伝広告によってヒットを生み出すのが常套手段だった。しかし『ロストアンブレラ』が辿った軌跡は、従来のJ-POPの流通構造とは根本から異なる。ユーザー発信の二次創作とアルゴリズムによる拡散が、純粋な楽曲の力だけで巨大なグローバルヒットを創出できることを証明してみせた。
音楽配信業界において、インディー発のボーカロイド楽曲が国境を意識させずにチャート上位へ食い込む現象は、今や珍しいことではない。だが本作は、その潮流を決定づけた先駆的なマイルストーンだ。商業的な思惑から遠く離れた場所で紡がれたパーソナルな表現が、結果として最も遠い場所まで届くという痛快な現実を提示した。