凄惨な事件が起きるたび、世間は「動機の解明」を強く求めます。しかし、法廷で明かされる加害者の心理は、第三者が直感的に納得できるような筋道の通った論理とはかけ離れているのが現実です。重大事件の背景を検証していくと、加害者が凶行へ踏み切る直前、精神的に極めて狭窄した心理状態に陥っている事実が浮かび上がります。
公判記録や精神鑑定書を紐解くと、加害者の多くは「他者から迫害されている」「この状況を打破するには排除しかない」という強烈な認知の歪み(敵意帰属バイアス)を抱えています。他人の何気ない言動や視線を「自分を攻撃・軽蔑している」と過剰に受け止め、自らを「一方的な被害者」と位置づけることで、暴力行使を正当化していく心理プロセスです。
かつて社会を震撼させた無差別殺傷事件の加害者が獄中手記で記した「誰でもよかったのではなく、自分を嘲笑してきた社会全体への復讐だった」という独白は、その象徴的な事例と言えます。彼らの多くは、現実の対人関係において健全な自己効力感を得られず、肥大化したプライドと無力感の板挟みになっています。その結果、他者の生命を奪うという究極の支配力を誇示することでしか、傷ついた自己を回復できないという致命的な倒錯に陥るのです。