深沢潮(ふかざわ うしお)は、1966年に東京都で生まれました。上智大学文学部国文学科を卒業後、一般企業への就職、日本語教師としての勤務、そして結婚と子育てという生活者としての濃密な年月を重ねた後に本格的な創作活動へと足を踏み入れた、いわゆる「遅咲き」の作家です。
転機が訪れたのは2012年。新潮社が主催する第11回「女による女のためのR-18文学賞」において、応募作「金江(かなえ)のおばさん」が選考委員の絶賛を浴びて大賞を受賞しました。審査にあたった作家陣から「日常の些細な機微に潜む人間の業と温もりをすくい上げる卓越した観察眼」を高く評価されたこの短編は、後に連作短編集『ハンサラン 愛するひとびと』(文庫化に際し改題『縁を結びて』)として結実し、単行本デビューを飾ることになります。
筆名の「潮」には、満ち引きを繰り返しながら岸壁を削り、また豊かな生命を育む海のような力強さと受容の精神が込められています。若年期からの華々しい文壇キャリアではなく、市井のなかで生活苦や家庭の摩擦、他者との摩擦を直に肌で知る生活者としての視線こそが、デビュー以来一貫して彼女の作品に揺るぎない説得力を与え続けています。