昭和の終わり、歌舞伎界の至宝である坂東玉三郎に比肩する存在として、突如としてスポットライトを浴びたのが梅沢富美男だった。メディアやファンは彼を親しみと畏敬を込めて「下町の玉三郎」と呼んだ。本物の女性以上に女性らしい仕草、伏せたまぶたから放たれる「流し目」の一撃は、客席の婦人たちを文字通り卒倒させた。
現在の親しみやすい「怒れるオジサマ」の姿からは想像もつかないほどの妖艶さ。当時のブロマイド売り上げはトップアイドルを凌駕し、舞台の幕が上がるたびに客席からは悲鳴に似た歓声が上がった。化粧を落とせば彫りの深い精悍な美男子。化粧を施せば息を呑む佳人へと変貌を遂げる。その劇的な二面性こそが、当時の日本列島を虜にした最大の秘密だった。