逮捕後の精神鑑定において、フランスの専門家グループは彼の精神状態について重大な判断を下した。犯行当時、重度の精神病状態にあり自己の行動を制御する能力が失われていたとして、フランス検察庁は刑法に基づき起訴断念を選択したのである。結果として、心神喪失を理由とした不起訴処分が決定し、彼は裁判を受けることなくパリ近郊のアンリ・ルーセル精神病院へ強制入院することとなった。
しかし、ドラマはそこで終わらなかった。1984年、実父らの尽力により日本へ送還されると、東京都立松沢病院に入院。ここで日本の精神科医陣によって行われた再鑑定では、彼が完全に無罪とされるほどの重篤な精神病状態ではなく、人格障害の範疇にあるという正反対の見解が示されたのである。だが、フランス側が不起訴処分として公訴を棄却しており、関係書類の提供も拒まれたため、日本の警察や検察は彼を改めて裁判にかける法的手段を失っていた。結果として彼は退院し、社会へ復帰するという異例の事態を迎えた。