マルガリータさんの半生は、決して平坦な道ばかりではなかった。フィリピン共和国で生まれ育ち、縁あって長野県木曽郡上松町へと嫁いだ若き日。豊かな自然に囲まれながらも、雪深い木曽の冬や言葉の壁に戸惑う日々は少なからずあったはずだ。だが、彼女持ち前の天真爛漫な明るさと人懐っこさは、瞬く間に地域の人々の心を掴んでいった。
幼少期の御嶽海久司が相撲と出会い、稽古に励むようになると、母の愛情は一段と熱を帯びた。毎日の食事作りから遠征の送迎まで、愚痴一つこぼさず全力でサポート。異国の地で築き上げた家族の絆は、どんな名伯楽の指導にも勝る強力な後押しとなった。木曽の山あいで育まれた無償の愛が、後に大相撲の頂点へと駆け上がる大関の根底を形作ったのだ。