左遷を告げられた労働者が最も陥りやすい致命的なミスが、「違法な左遷なのだから、業務命令を即座に無視・拒否して出社しなければよい」という早まった判断です。ここには労働法実務上の大きな落とし穴が存在します。
日本の雇用契約(特に正社員・無期雇用)では、就業規則や雇用契約書に「業務上の都合により異動・転勤・配置転換を命じることがある」という包括的合意条項が盛り込まれていることが大半です。この場合、形式的には会社に配転命令権があるため、労働者が単独の自己判断で一方的に着任を拒否し続けると、「業務命令違反」や「無断欠勤」を理由に懲戒解雇されるリスクを背負うことになります。
たとえ最終的に裁判で配転命令が無効と判断される可能性が高くても、懲戒解雇の有効性を巡る係争に発展すると、解決までに数年単位の長期戦を強いられ、その間の収入や精神的負担は甚大になります。
したがって、不当な配置転換を拒否する方法としては、感情的に命令をボイコットするのではなく、「異動命令に対して重大な不服がある」旨を書面(通知書や電子メール)で明確に表明しつつ、業務上の必要性や選定理由についての説明を求めるプロセスを踏む必要があります。配転命令の効力停止を求める仮処分申し立てを行うなど、法的手続きと並行して戦略的に立ち回ることが不可欠です。