第63代横綱・旭富士正也として一時代を築いた現師匠の指導法は、旧態依然とした精神論とは一線を画す。土俵上での鋭い観察眼は現役時代さながら。個々の力士の骨格や筋肉の付き方、相撲の特性を徹底的に見極め、長所を極限まで伸ばすオーダーメイドの指導を貫く。
「土俵に嘘はつけない」。親方が弟子たちに繰り返し説く言葉だ。怪我のリスクを減らす身体の使い方から、勝負どころでのメンタルコントロールに至るまで、極めて合理的。それでいて、稽古場で見せる情熱は誰よりも熱い。厳格さの裏にある深い情愛があるからこそ、弟子たちは迷いなく師匠の背中を追い続ける。