体操競技において極限の集中力を求められ続けた内村航平にとって、日々の生活のすべては「いかに最高のパフォーマンスを出すか」という一点に集約されていた。食事、睡眠、トレーニングのスケジューリングに至るまで、彼にとっての現役生活は徹底的なセルフコントロールの連続だった。しかし、その求道者ゆえの厳しさは、家庭というプライベートな空間においても強い影を落とすこととなった。
妻である千呼さんとの間に生じた最初の摩擦は、日々の生活習慣や食生活をめぐる些細な行き違いだったとされる。ストイックさを追求するアスリートの日常と、幼子を育てながら家庭を守る妻の日常。互いが求める「当たり前」の基準があまりにもかけ離れていたことが、少しずつ、しかし確実に夫婦の距離を広げていった。