地方都市の私立美術館に、世界中の大美術館が喉から手が出るほど欲しがる名画が揃っている光景は、初見の鑑賞者に強烈なインパクトを与えます。この奇跡的なコレクションを実現させた人物こそ、地元・姶良市加治木町出身の実業家であり、松下美術館の創設者である松下兼知(まつした・かねとも)氏です。
実業界で大きな成功を収めた松下氏は、若き日に上京や渡欧をした際、本物の芸術が持つ人間形成の力に深い感銘を受けました。「地方に住む子どもたちや若者が、東京や海外へ行かずとも本物の名画に触れられる環境を作りたい」――その純粋で熱い情熱が、美術館設立の原動力となりました。
1983年の開館以来、松下氏が情熱と私財を注ぎ込んで蒐集したコレクションは、単なる美術愛好家の枠を遥かに超え、文化遺産級の規模へと発展しました。地方創生や文化教育が再評価される2026年現在においても、その志の高さは展示室の随所から雄弁に伝わってきます。