粉瘤(正式名称:アテローム/表皮嚢腫)の成り立ちを理解すると、なぜ自力除去が不可能なのかが明確になります。粉瘤の本体は、何らかの理由で皮膚の深部に落ち込んだ表皮細胞が球状の「袋」を形成したものです。
この袋の内壁は通常の皮膚表面と同じ代謝活動を行っており、毎日新しい角質や皮脂を作り出します。しかし、出口が毛穴の微小な開口部(面皰)に限られているため、剥がれ落ちた垢(死細胞)と脂が外へ排出されず、袋の中に年単位で蓄積され続けます。これが、粉瘤独特のチーズ状・ペースト状の白濁した老廃物です。
長期間密閉空間で酸化した皮脂と角質には嫌気性菌が繁殖し、押し出した際に独特の強烈な腐敗臭や酸っぱい悪臭を放ちます。「臭いが出るから取り出したい」と焦る人が多いものの、中身をいくら絞り出しても袋自体が存在し続ける限り、数週間から数カ月で再び老廃物が溜まり元通りのサイズに戻ってしまいます。
粉瘤の放置には、以下のような明確なリスクが存在します。
第1に「腫瘍の巨大化」です。初期は数ミリの米粒大だったものが、数年放置することで直径5cm〜10cmを超えるゴルフボール大やグレープフルーツ大に成長する事例も珍しくありません。巨大化するほど摘出後の皮膚欠損が大きくなり、手術時の切開範囲が広がって傷跡が目立ちやすくなります。
第2に「突然の自潰と難治化」です。体調不良や外圧をきっかけに袋が破れると、周囲の皮膚が広範囲に融解し、ドレナージ(排膿処置)のために連日の通院が必要となります。炎症を起こしている最中は局所麻酔が効きにくく、袋がドロドロに溶けて境界が不明瞭になるため、一度の手術で全摘出することが極めて困難になります。