一方で、防御性能を極限まで高めながら、視覚的なブランド戦略として甲冑を使い倒したのが奥州の覇者・伊達政宗である。漆黒の光沢を放つ「黒漆五枚胴具足」に、鋭利な弦月形の前立を配した兜。そのシルエットは、一度見たら脳裏に焼き付いて離れない異彩を放つ。
政宗の五枚胴は、蝶番によって素早い着脱を可能にした実戦本位の設計でありながら、無駄な装飾を削ぎ落とした漆黒のプレートで全身を覆い尽くしている。軍勢全体で黒の統一感を演出することで、乱戦の霧の中でも味方の結束を高め、対峙する敵に強烈な威圧感を植え付けた。甲冑は単なる防護壁ではなく、己のカリスマを戦場全体へ誇示するためのメディア装置でもあった。