華やかな舞台の裏側には、徹底して妥協を許さない凄まじい執念があった。成駒屋の家風である「芸に対する誠実さ」を誰よりも重んじた彼は、楽屋に入った瞬間から一切の私生活の匂いを消し去ったという。着物の裾の裁ち方から扇子の開き具合まで、ミリ単位の美しさにこだわり抜いた。
息子である八代目 中村芝翫をはじめとする弟子たちへの指導も、極めて厳格だった。しかし、その厳しさの裏には、歌舞伎という文化を未来へ正しく繋ぎたいという深い慈愛が存在していた。楽屋を訪れた若手役者に、ふと見せる温かい微笑みと的確な一言アドバイス。それは多くの後輩にとって、一生の宝物となった。