小宮山の代名詞といえば、球界を騒然とさせた魔球の存在を忘れてはならない。シェイク(魔球・投球理論)と名付けられたそのボールは、人差し指と中指でボールを挟み、ほとんど回転を与えずに押し出すように投じられる。球速はわずか80キロから90キロ程度。ゆらゆらと揺れながら打者の手元で不規則に沈む軌道は、まさに打者のタイミングを狂わせる究極のチェンジアップだった。
「スピードガンコンテストではない。バッターの芯を外せばアウトになる」。このシンプルな真理を具現化したのがシェイクだった。球速至上主義へのアンチテーゼとも言えるこの魔球には、力学と心理戦を突き詰めた彼の野球哲学が凝縮されている。