藤田美術館の根幹を成すのは、明治期に関西財界の重鎮として活躍した実業家・藤田傳三郎(ふじた でんざぶろう)と、その長男・平太郎、次男・徳次郎の親子2代にわたって築き上げられた圧巻のコレクションです。所蔵品は約2,000件に及び、その中には国宝9件、重要文化財53件という傑出した文化財が含まれています。
明治維新に伴う廃仏毀釈や社会の激変によって、寺院や旧家から貴重な日本の名宝が海外へ流出しかけた際、傳三郎は「国家の宝を散逸させてはならない」という強い使命感から私財を投じて美術品を買い戻し、保護しました。その情熱の結晶こそが、現在のコレクションの礎となっています。
中でも圧倒的な知名度と美しさを誇るのが、国宝「曜変天目茶碗」です。黒釉の表面に星空や小宇宙を思わせる青や瑠璃色の斑紋が浮かび上がるこの茶碗は、中国・南宋時代に焼成されたもので、現存する完形品は世界にわずか3碗(すべて日本国内にあり国宝指定)しか存在しません。光の当たる角度によって妖艶に色彩を変える光彩は、現代の陶芸技術でも完全な再現が不可能とされています。
なお、曜変天目をはじめとする主要な国宝は常設展示されているわけではなく、作品保全の観点からテーマごとの企画展に合わせて公開されます。公式発表資料やスケジュールによると、春夏秋冬の展示替えに合わせて順次公開されるため、曜変天目の鑑賞を目的に訪れる際は、公式サイト等で事前の展示期間の確認が欠かせません。