司馬作品の唯一の難点は、大半が複数巻に及ぶ長編であり、入り口を誤ると途中で挫折しやすい点です。読書体験を成功に導くための司馬遼太郎の初心者向け読む順番を、体系的なロードマップとして提示します。
最初のステップとして推奨されるのは、文庫全2巻で完結し、ストーリーテリングの魅力が凝縮された『燃えよ剣』です。司馬特有の「余談ながら」という歴史的解説の挿入スタイルに慣れつつ、土方歳三という魅力的な主人公の疾走感を短期間で味わい尽くすことができます。
第2ステップでは、いよいよ司馬文学の真骨頂である大長編『竜馬がゆく』(文庫全8巻)への挑戦が適しています。1巻ごとに主人公が成長し、日本全国を舞台にネットワークを広げていく展開は、長さを一切感じさせないエンターテインメント性を備えています。ここで「司馬ワールド」の文体と呼吸を完全に体得することができます。
第3ステップで到達すべきが、精神の最高峰である『坂の上の雲』(文庫全8巻)です。日露の外交戦や陸海軍の壮絶な戦闘記録、正岡子規による俳句革新など、国家と文化の交差点が重厚に描かれるため、読書体力がついた段階で挑むことでその真価を余すところなく味わえます。その後、関心に応じて『関ヶ原』や『峠』、あるいは『街道をゆく』へと手を広げていくのが、絶対に失敗しない王道の読書ルートです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
司馬遼太郎の作品群は比類なき名著ですが、すべての読者に対して無条件にフィットするわけではありません。購入や通読に踏み切る前に、以下の判断基準を確認することをおすすめします。
【強くおすすめできる人】
- 歴史上の人物の意思決定プロセスや、組織におけるリーダーシップの葛藤を追体験したい人
- 困難な局面を打開するための活力や、前向きな「人生の指針」となる言葉を求めている人
- 単なる事実の羅列ではなく、作家の透徹した知性と広い視野(メタ視点)を共有したい人
【慎重になるべき人・好みが分かれる人】
- 100%の学術的厳密さや、最新史料に基づく一次資料的な正確性のみを読書に求める人(フィクションとしての脚色が含まれます)
- 本筋の物語以外の解説や脱線(いわゆる「司馬節」の余談)を冗長に感じてしまう人