1959年天覧試合は、日本のメディア環境にとっても決定的なパラダイムシフトをもたらした。当時、普及期にあった家庭用白黒テレビの前に数多くの国民が釘付けとなった。日本テレビ放送網とNHKによる生中継は、街頭テレビや居間に熱狂の渦を巻き起こしたのである。
現在、NHKアーカイブスなどに保存されている当時の映像記録をデジタルリマスターで精査すると、技術的制約の多かった時代におけるカメラワークの工夫が見て取れる。実況アナウンサーの張り詰めた声、打球音の生々しさ、そしてスタンドの観客が総立ちになる瞬間。テレビという新興メディアが国民的一体感を醸成する装置として機能した最初の実例が、まさにこの試合だった。