JICの存在感を世界に知らしめたのが、半導体材料大手・JSR株式会社に対する約9000億円規模の買収(TOBによる非上場化)です。優良上場企業であったJSRが、なぜ官民ファンドの傘下に入ったのか。その背景には、極めてシビアな地政学リスクと産業構造の課題が存在します。
JSRは、最先端半導体の製造に不可欠な「EUVレジスト(感光材)」で世界トップシェアを誇ります。しかし、半導体素材業界は多数の国内メーカーが乱立し、各社が十分な規模を持たないまま消耗戦を強いられていました。上場を維持したままでは、四半期ごとの利益圧迫を嫌気する株主の目があり、数千億円規模の次世代研究開発や他社買収に踏み切ることが困難でした。
JICによる非上場化の狙いは明確です。短期的な市場のプレッシャーを遮断し、国家レベルでの半導体サプライチェーン防衛と業界再編のハブに仕立て上げること。さらにJICは、富士通グループの半導体パッケージ基板大手である新光電気工業の買収も主導。素材から基板、後工程に至るまで、日本が強みを持つ半導体エコシステムを構造的に防衛・強化する司令塔としての役割を果たしています。