この演目を語る上で、五代目坂東玉三郎の存在を抜きに語ることはできない。玉三郎が舞台上で体現した鷺の霊は、神話的な透明感と官能美が奇跡的な均衡で同居する、まさに伝説と呼ぶにふさわしい境地だった。彼の踊る鷺は、ただ美しいだけでなく、冷徹な孤独と痛切な哀哀が観客の皮膚感覚にまで突き刺さるようなリアリティを持っていた。
そしてその崇高な美学は、八代目尾上菊之助をはじめとする次世代の表現者たちへと確かに受け継がれている。菊之助の端正な骨格から生まれるシャープな動きと、内に秘めた情熱のほとばしりは、古典の型を守りながらも現代の瑞々しい息吹を舞台に注ぎ込む。伝統とは決して固定された化石ではなく、優れた役者の肉体を通して更新され続ける生きた炎であることを、彼らの舞台は証明している。