きなこもちブームの歴史を語る上で、絶対に外せない金字塔が存在する。チロルチョコ株式会社が世に送り出した傑作「きなこもち」だ。
2000年代初頭、この画期的な商品を牽引したのが、同社を率いた松尾利彦氏である。チョコレートの中に本物の餅のようなグミ・ゼリー食感を閉じ込めるという前代未聞の試みは、当時の菓子製造業における常識を覆す大冒険だった。きなこの配合率、チョコの口溶けと餅の弾力のバランス。幾度もの試作と失敗を重ねて誕生したそのキューブは、発売と同時に市場で爆発的なヒットを記録する。
伝統的な和菓子の味わいを駄菓子感覚のチョコレートに落とし込むという離れ業は、業界全体に強烈なインパクトを与えた。季節限定の枠を超え、いまや日本の冬の風物詩として定着したこのロングセラーは、開発陣の執念と遊び心が生んだ結晶にほかならない。